婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する

「城でひと目見たときから、ずっとあなたを想っていました」

　アンジェリ―ナのせいでツンデレキャラが崩壊している彼は、恥ずかしそうにしながらもストレートにアンジェリ―ナに想いを告げてくる。

「殿下があなたに婚約破棄を言い渡したとき、俺は心に誓いました。全てを投げ捨ててでもあなたを追いかけ、必ず俺の妻にすると。アンジェリ―ナ様、どうか俺と結婚してくださいませんか？」

　神秘的なダークブルーの双眸が、目前に迫ってきた。

　出会って早々にプロポーズなど、乙女ゲームのシナリオとしてあり得ない。

（これは、重症だわ……）

　アンジェリ―ナは、軽いめまいを覚える。

　そこで、「きゃあああああ！」という耳をつんざくような黄色い声が、部屋いっぱいに響き渡る。

　いつの間にか戸口にララが立っていて、目から大量のハート光線を発射させている。その背後にはトーマスもいた。

「なんて情熱的なプロポーズなんでしょう！」

　興奮のあまりゼハゼハと呼吸をしながら、ララがアンジェリ―ナに縋りつく。

「アンジェリ―ナ様、もちろんお受けしますよね！　ビクター様にこの塔から救い出してもらい、ふたりでお幸せになってください！」