婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する
涙ぐんでいるララの後ろで、「いや、脱獄はだめですだよ」とトーマスが小さく呟く。
ララがキッとトーマスを睨めば、途端に彼はしおらしくなった。
アンジェリ―ナは一歩後退し、迫りくるビクターから離れると、引き攣った笑みを浮かべる。
「申し訳ないのですが、謹んでお断り申し上げます」
すると、目の前の美形の騎士は、目に見えて顔に絶望を滲ませた。そして、悔しげに唇を噛む。
「なぜ? やはり、まだスチュアート殿下のことを……」
「スチュアート様のことは、もうどうでもいいです。今の今まで、記憶の彼方に存在を蹴りやっていたくらいですわ」
「では、他に想い人が?」
ビクターの苦渋の問いに、アンジェリ―ナはしたたかな笑みを浮かべた。
「ええ」
「誰ですか、その男は。もしや、彼?」
斬ってやる、と言わんばかりに腰に挿した剣に手をかけ、ビクターが戸口にいるトーマスを射るように見据えた。とんだとばっちりを食らったトーマスは「ひぃぃぃ!」と怯えた声を上げながら、階下へと逃げていく。
「違います」
アンジェリ―ナは答えると、湿っぽくかび臭い塔の空気を全身に浴びるように、大きく両手を広げた。
ララがキッとトーマスを睨めば、途端に彼はしおらしくなった。
アンジェリ―ナは一歩後退し、迫りくるビクターから離れると、引き攣った笑みを浮かべる。
「申し訳ないのですが、謹んでお断り申し上げます」
すると、目の前の美形の騎士は、目に見えて顔に絶望を滲ませた。そして、悔しげに唇を噛む。
「なぜ? やはり、まだスチュアート殿下のことを……」
「スチュアート様のことは、もうどうでもいいです。今の今まで、記憶の彼方に存在を蹴りやっていたくらいですわ」
「では、他に想い人が?」
ビクターの苦渋の問いに、アンジェリ―ナはしたたかな笑みを浮かべた。
「ええ」
「誰ですか、その男は。もしや、彼?」
斬ってやる、と言わんばかりに腰に挿した剣に手をかけ、ビクターが戸口にいるトーマスを射るように見据えた。とんだとばっちりを食らったトーマスは「ひぃぃぃ!」と怯えた声を上げながら、階下へと逃げていく。
「違います」
アンジェリ―ナは答えると、湿っぽくかび臭い塔の空気を全身に浴びるように、大きく両手を広げた。