追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました2
「もう少し下流に、最近、吊り橋が設置されています。大橋はいつも、観光客で混み合っておりますから、地元民らがその混雑を避けるために、生活用橋として架けたのです。……ええと、……あぁ、あそこです。木の葉に隠れて少々見にくいのですが、吊り橋の一部が見ていただけますね」
 護衛官が指差す川の下流に目線を向ければ、……なるほど!
 簡易的な様相だが、たしかに川の対岸まで吊り橋が架けられているのが見てとれた。
「へー! そんな橋が出来たなんて知らなかったよ。だけどそれって、設置に協力をしていない地元民以外も渡れるの?」
「吊り橋の利用に制限は設けられていませんから、大丈夫です」
「そうなんだ! そっちの方が断然楽しそうだ。よく教えてくれたね!」
 冒険はいつの時代も少年の大好物だ。ノアールも例外でなく、吊り橋という心躍る道程への変更に、キラキラと瞳を輝かせた。
 ノアールに正面から礼を告げられた護衛官は、恐縮した様子でスッと頭を低くした。
「さっそく行ってみよう!」
 下流に向かって歩き出すノアールの足取りは軽い。
 俺はどことなくしっくりこない思いを抱きつつ、ノアールの後に続いた。

< 168 / 216 >

この作品をシェア

pagetop