追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました2
「さて、どうだかな。……それより、ずいぶん遅かったな。もっと早く来るかと思っていたが、なにか立て込んでいたのか?」
俺が振った問いに、奴はフッと口もとを歪ませた。そうして俺を真っ直ぐに見つめ、その口を開いた。
「実を言うと、ここに来る前にひと悶着あったのです。……バーモン侯爵夫妻の逮捕を受け、私は王位継承権の放棄を父と大臣らに申し出ました」
奴の口から聞かされたのは、俺が想像したとおりの物だった。
もしかすると昨日に引き続き、今日も躱されるかと思ったが、こいつはもう、はぐらかそうとはしなかった。
「……やはり、王位継承権の放棄を考えていたか」
「ところが、その場にノアールが飛び込んできて、バーモン侯爵夫妻と私は関係がないと、私は私だと、主張を始めたのです。そうして私が王位継承権を放棄するなら、自分も放棄すると強固に言い張りました。梃子でも動かぬノアールに、審議は一旦中断。おかげで私は現在も王位継承権第一位、王太子のままというわけです。この後、父やノアールと改めて話し合いの場を設けます」
「お前の弟は、お前のことを実によくわかっている。そうして、とんだ頑固者でもあるな」
バーモン侯爵夫妻の評判は、お世辞にもよくなかった。彼らにとって、孫は愛情を注ぐ対象ではなく、次期国王の外戚という権威を与えてくれる駒だった。こいつ自身、形式的な場を除き、彼らとの個人的な交流は皆無だったようだ。
こいつはきっと、俺が告げた昨日よりも前から、確証がないまでもバーモン侯爵家の醸す不穏な空気を察していたのだろう。それと同時に、自身の王位継承権放棄についても考えていたに違いない……。
俺が振った問いに、奴はフッと口もとを歪ませた。そうして俺を真っ直ぐに見つめ、その口を開いた。
「実を言うと、ここに来る前にひと悶着あったのです。……バーモン侯爵夫妻の逮捕を受け、私は王位継承権の放棄を父と大臣らに申し出ました」
奴の口から聞かされたのは、俺が想像したとおりの物だった。
もしかすると昨日に引き続き、今日も躱されるかと思ったが、こいつはもう、はぐらかそうとはしなかった。
「……やはり、王位継承権の放棄を考えていたか」
「ところが、その場にノアールが飛び込んできて、バーモン侯爵夫妻と私は関係がないと、私は私だと、主張を始めたのです。そうして私が王位継承権を放棄するなら、自分も放棄すると強固に言い張りました。梃子でも動かぬノアールに、審議は一旦中断。おかげで私は現在も王位継承権第一位、王太子のままというわけです。この後、父やノアールと改めて話し合いの場を設けます」
「お前の弟は、お前のことを実によくわかっている。そうして、とんだ頑固者でもあるな」
バーモン侯爵夫妻の評判は、お世辞にもよくなかった。彼らにとって、孫は愛情を注ぐ対象ではなく、次期国王の外戚という権威を与えてくれる駒だった。こいつ自身、形式的な場を除き、彼らとの個人的な交流は皆無だったようだ。
こいつはきっと、俺が告げた昨日よりも前から、確証がないまでもバーモン侯爵家の醸す不穏な空気を察していたのだろう。それと同時に、自身の王位継承権放棄についても考えていたに違いない……。