追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました2
「頑固者というのは間違いありませんが……。けれど、本当に私のことをわかっているというのなら、彼は私の継承権放棄を止めなくてよかったのです。何故なら私は、ノアールが次期国王になることに、なんの不満もなかったのですから。……私は生母を知りません。私の知る母は、アンリエッタ様ひとりです。彼女は本当に素晴らしい女性で、私にもノアールにも分け隔てない愛情を注いでくれた。もちろん、国民に対しても。そんなアンリエッタ様を母に持つノアールこそ、王になるに相応しいと、私はずっと思っていたのです。ノアール自身、アンリエッタ様に似た穏やかな気質で、必ず良き王となれる。そうして父にとっても、政略で娶った前妻の子より、愛した女性の生んだ息子が跡を継いだ方がいいに決まっています」
これほど才にあふれた男でも、生母亡き後の一家にあって、父と、その父が愛して迎え入れた後妻の女、そしてその子である弟に対して、引け目を抱いてきたらしかった。
……しかし、おかしな話だった。俺のもとにやって来たレオナルド王は、ノアールの命を救ったことはもちろんだが、「もしノアールが殺されていたら、クロフは壊れていた」と、「あなたによってノアールのみならず、クロフも救われた」と、そう言って涙したのだ。
それを見れば、他人の俺にだって、レオナルド王がふたりの息子を分け隔てなく愛しているのは瞭然だった。
なんとなく、互いが互いを思うからこそ、空回りをしてしまっているような、そんな印象がした。
とはいえ、これは部外者の俺が首を突っ込む内容ではない。