追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました2
「一見とろけた目をしてにやけてるようだが、奴はグッと口を引き結んでんだろ? あれは、快感に従順な獣の本能に引き摺られまいと、僅かに残る人の意識で戦ってるからだ」
 ルークに言われジッと見てみれば……なるほど! とろけて見えるプリンスだが、その口は、ギュッと真一文字に引き結ばれているではないか――!
「……そっか、そうだよね。カーゴだって、なりたくてあの姿でいるんじゃないんだもの。物凄く悩んで、苦しんでるのよね……」
 ルークに指摘され、私は身勝手に「私だけのモフモフなのに……」などと考えていた自分が恥ずかしくなった。
「……いや。戦った結果、どうやら人の意識は惨敗を喫したようだな」
 え? 自己嫌悪に項垂れていると、頭上からルークの苦い呟きを聞く。
 おもむろにプリンスへと目線を向ければ、まさか――!
「っ! ルーク、私、遅くなるから行ってきちゃうね。いってきます!」
 私はルークに叫ぶように告げると、逃げるように駆け出した。
「って、おい!? ……アイリーン気をつけろよ!」

 駆け足でカフェを飛び出して、プリンスの姿が見えなくなったところで、私は足を緩めた。
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