追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました2
「だけどなんて言うか、この黒ちゃんは可愛いより、カッコイイっていうか……そう! イケメンな感じ!」
「あ! わかるわかる~!」
 頭を金槌で打たれたようなガーンッとした衝撃に、俺の体がグラリと傾ぐ。
 俺はボテンッと四つ足に戻り、ガックリと項垂れた。
 しかも俺が四つ足に戻る直前、あろうことか奴は、女性客らにモフモフとされながら俺を流し見て、「フッ」と小馬鹿にしたように鼻を鳴らした。……皆、騙されている。奴はとんでもない、性悪だ――!
「ふふふ。本当にツヤツヤで、イケメンですよね。実は私、昨日この子に助けてもらってるんです。満足なお礼もできないまま、それっきりになっちゃうのかなって思っていたら、まさか今朝、お店に来たら入口の前で待ってくれていたんです。本当に、驚いちゃいました」
「まぁ! アイリーンさんを助けるなんて、お利口さんなのね!」
「偉いわ~!」
 アイリーンの言葉に女性客は大いに沸き、口々に黒オオカミを絶賛した。けれど俺は、彼女が口にした「助けてもらった」のひと言に首を傾げた。
 もしかして彼女は、俺のいない間になにか危険な目にあったのだろうか。
 ……だとすれば由々しき事態! こんなところで項垂れて、奴に出遅れている場合ではない。今後は一層、アイリーンの身の安全に留意して、周囲に目を光らせておかなければ……!
 俺は決意を新たにし、再びピョンっと後ろ足で立ちあがった。するとアイリーンが、俺の「いつもの」全部のせプレートを持って、奴の元へ歩いていくのが見えた。
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