追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました2
 厨房に面したカーゴの指定席に腰掛けて、私の閉店作業を見守っていたルークが声をあげる。
 その横で丸まっていたプリンスも、四つ足で立ち上がって扉へと首を巡らせた。
「閉店時間を知らないとなると、村外の方かしら……」
 とはいえ、さすがにこの時間からの応対は難しい。せっかく来店してくれたお客様には申し訳ないけれど、丁重に閉店を伝え、帰ってもらうしかない。
 私は慌てて厨房を飛び出して、お客様のもとへと駆けた。
「すみませんが、お客様――」
 ……え!? ところが、来店を断ろうと口にのせかけた台詞は、最後まで続かなかった。
 だって、扉から店内に身を滑らせたマントを被った男性は――!
「アイリーン、お久しぶりです」
 フードで顔が見えなくても、この声はもう、間違いなかった。
 男性は颯爽と店内を進み、私の前で立ち止まる。そうしてハラリと、被っていたフードを落とした。
「夜分の訪問になってしまい、申し訳ありません。ですが、一刻も早くあなたに会いたくて、明日の開店が待てませんでした」
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