追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました2
「頭をあげて。弟さんの力になれたら、それは私にとっても嬉しいことだわ」
「アイリーン、やはりあなたは……」
 クロフが口内で、なにごとか小さく呟く。くぐもったそれは、私の耳には意味あるものとして届かなかった。けれど、聞かせる意図ではなかったのだろうと判断し、問い返すことはしなかった。
 プリンスは、私の決断に反論の声をあげなかった。この後、具体的な道程へと話題が移っても、なにごとか考え込むようにジッと床の一点を見つめていた。
 こうして私は、五日後のラファーダ王国行きを決めた。

***

 こんな事態は、まるで想定していなかった。
 まさかアイリーンが奴と共に村を去り、俺がひとり、村での留守番を余儀なくされるなど、いったい誰が想像できただろう。
「すみません。俺たちの旅行中、こんなでかいのの世話を頼んじまって」
 ルークが玄関先で頭を下げる。
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