追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました2
「アイリーン殿、よいよい。ここは公的な謁見の場ではないゆえ、堅苦しい口上はなしで構わん。それよりも、菓子職人として貴殿を招くに至った経緯は、既にクロフより聞いておろう? 我が妃アンリエッタ亡き後、末息子ノアールはすっかり消沈してしもうた。わしは貴殿の菓子が、そんな息子の現状打開の鍵になると思うておるのだ。さっそくノアールの現状と今後の方針について、貴殿に相談をさせてもらいたい」
 国王様は、私が必死で練習した長口上を制し、さっそく本題を口に乗せた。ノアール様について語る姿は、まさに真剣そのもの。そんな国王様の様子を見るに、我が子を心配する親心に、身分の高低は関係がないのだと感じ入る。
「父上、彼女はたった今宮殿に到着したばかりです。なにより、もう時間も遅い。今宵はゆっくり休んでもらい、詳細の相談は明日、改めて場を設けるべきかと」
「それもそうじゃな。ノアール可愛さに、すっかり気が急いでしまったようじゃ。長旅で疲れておろうに、気が利かぬことを申した。ではアイリーン殿、今宵はゆるりと休んでくだされ」
 国王様はクロフの進言にハッとしたように頷き、こんなふうに言った。
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