追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました2
 ふと、俺の飯が確保されていないことに思い至る。俺は身ひとつで飛び出しており、当然食料などは持っていない。首からがま口だけは下がっていたが、マイベリー村ならいざ知らず、見知らぬ土地では多少の現金があったところで、猛虎姿の俺に購入する術はない。
 ……な、なに。三、四日食わずとも、どうということもない!
 俺は気を取り直して、馬車を注視した。
 馬車からまず、ルークが降りてきて店に向かう。続いて降りてきたアイリーンが、奴に話し掛けた。話題は、途中でルークが見掛けたという珍しい動物についてだった。
 ……ほぅ。そんな物が馬車の周囲をうろついていたのか?
 ずっと神経を研ぎ澄ませて馬車の周囲を警戒していたが、俺はちっとも気付かなかった。これはますます気を引き締めて、警戒を強化しなければならないぞ!
 俺はひとり、決意を新たにした。
 その時、奴が突然、ガサゴソと荷袋を漁り出す。そうして中からなにかを引っ張り出すと、ふわりと広げてアイリーンに掛ける。
 あれは――!! 視界に飛び込んできた眩しいほどの光沢に、カッと両目を見開いた。
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