追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました2
 俺は皇家に生まれ、見る目が養われている。それは毛織物の最高峰、ビクーニャのストールに間違いなかった!
 しかも奴が彼女に掛けたそれは、艶感質感から見て、ビクーニャの毛織物の中でも超一級品だ。
 俺は驚愕に打ち震えながら、脳内で即座に電卓を弾く。原産地のラファーダ王国ならば、セント・ヴィンセント王国や我が国で入手するよりは破格に安いが、それでもあの品質なら……っ!
 脳内電卓に映し出された価格に、ゴクリと喉を鳴らした。
 アイリーンもおおよその価値を察した様子で、奴にストールを返そうとする。俺はアイリーンの行動を、全力で応援した。
 ……そうだ! もらっては駄目だ、アイリーン! 騙されてはいけない、そのストールの主成分は、百万エーン分の下心だ――!
 なにより、奴から受け取らずとも、そんなものは俺がすぐに買って……ハッ! だ、駄目だ……。
 カフェ通いを想定した俺のがま口には、三千エーンしか入っていない――! これではどう逆立ちしても、すぐには買えない……。
 がま口の中身に思い至った俺は、衝撃に打ち震えていた。その間も、奴とアイリーンは親し気に言葉を交わす。
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