追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました2
 奴が食堂の入口に消えた瞬間、俺は吸い込んだまま止めていた息を吐き出して、限界に差し掛かっていた口呼吸を再開させた。
 吸って吐いてを繰り返す。やっと呼吸が落ち着いたところで、キョロキョロと周囲を見回して人の気配がないのを確認し、茂みの向こう側に回り込んだ。
 ……奴はいったい、なにを置いていったんだ?
 奴の立っていた場所に向かえば、そこには両手に収まるサイズの茶色い包みが置かれていた。
 ……竹の皮? 謎の包みに首を捻りつつ、ちょいちょいと開けてみる。
 こ、これは――!
 俺が竹皮の包みを解けば、中からツヤツヤと米粒が光るみっつの握り飯が現れた。
 ……おぉおお~! これはなかなかうまそうだ!
 ――グゥウウウ~。キュルルルル~。
 腹の虫も、大音量で同意する。
 どれ、さっそく……! 嬉々として手前の握り飯を掴もうとして、ハッとして伸ばした前足を止めた。
 ……待て、敵からの施しを受けるわけにはいかん。なにより、奴がどんな意図で置いていったのか、わかったものではないぞ。……ハッ! まさか、毒でも入っているのではあるまいな!?
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