追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました2
 やきもきしながら見つめていると、奴が窓越しにチラリと俺を振り返り、勝ち誇ったようにフッと、口角を上げてみせた。
 っ! 前言は撤回で、奴は『良い奴』なんかじゃない。鼻持ちならない性悪オオカミだ!
 アイリーン、危険は車外ではない。車内に潜んでいるぞ――!
 全身の体毛をビリビリと逆立たせ、俺は声なき声で彼女に警告を叫んだ。

◇◇◇

 ――これが、二日前のことだ。
 回想から意識が今へと舞い戻れば、胸が屈辱と悲しさで満たされる。
 しかしそれもそのはず、俺は二日前の昼からここまで、八回分八食もの飯を似たり寄ったりの形で奴から恵まれてきたのだから。
 ……ぅうううっっ。人型にさえなれれば、こんな施しを受けずとも、がま口のお金で好きな物を買えたのに。三千エーンで八食を賄うには、かなりの節約が必要になるが、奴の施しより余程いいに決まっている。
 ……いや。人型ならば、そもそも首からがま口を下げてこっそり後を追うなどしなくとも、アイリーンの馬車に同乗できていたのだ……ぅ、ぅううっっ。
 しくしくと涙に暮れる俺を、真ん丸のお月様が見つめていた。


 翌朝、俺は日の出と共に目覚めた。
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