追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました2
 背もたれにしていた特大のクッションから身を起こし、ぬくぬくの絨毯の上でグーッと大きく伸びをした。
 俺が昨晩の寝床にしたここは、ラファーダ宮殿の本殿の裏にひっそりと建つ高床の貯蔵庫の二階だ。何故俺がこんなに快適な寝床を得ているのかといえば、甚だ遺憾ではあるが、これまた奴の手引きによる。
 昨日、アイリーンたちが宮殿に消えた後、やっと涙も乾いてきた俺が、大木の根元に移動して丸まっていると、突然奴が現れた。
 馬車を追っていた二日間、奴は俺の追従を知り、都度都度施しをしながらも、直接対峙しようとはしなかった。そんな奴が一転、俺の前に姿を見せたことを、少し意外に思った。
 ……なんだ? 夜食でも運んできたか?
 そんな俺の内心の疑問に、奴は例の如くフッとニヒルな笑みを浮かべ「あいにくと夜食は、ここには持って来ていない。だが、向こうに用意はさせている」と、こんなふうに答えた。
 そうして、俺の前でポポンッ!っと小気味よい音を立ててオオカミの姿に転じると、「ついて来い」とでも言うように、尾っぽをヒラリと揺らしながら駆け出した。
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