瞳に印を、首筋に口づけを―孤高な国王陛下による断ち難き愛染―
 自分はなにを欲しがっていたのか。幸せになんてなれない。そんな資格ない。愛もわからない。けれど……。

――そうすれば、きっといつか必ず手に入る。

 ふと遠い昔に神と契約したときの記憶が蘇える。そもそもどうして神と契約を結ぼうと思ったのか。

 死を恐れて? 他とは違う特別な存在になりたかった? どれも違う。あのとき私が本当に願ったのは……。

「……たい」

 レーネの唇がかすかに動き、音になったか、ならないかほどの小さな声が紡がれる。

「愛され、たい。私、本当はずっと……愛されたかった」

 口にすると当時の思いと同調し、胸の奥が締めつけられる。痛みを伴うほどの切なさに心が震える。

 誰からも必要とされない孤独な人生は寂しかった、つらかった。ひとりでも大切な人がいれば、なにか違っていたのかもしれない。

 必要とされたくて、受け入れてほしくて渇望した。他にはない、なにか特別な力があれば容易く愛を得られると、愛されると信じて疑わなかった。

 けれど、結局大事にされるのは特別さに対してだ。神子と神聖視され、片眼異色という外見で注目を浴びる。それを延々と繰り返す中でわからなくなった。

 愛ってなに? 私が望んだのはこんなことだった? 
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