瞳に印を、首筋に口づけを―孤高な国王陛下による断ち難き愛染―
「権力者はいかがでしょうか?」

「権力者?」

 カインの提案にレーネはおうむ返しをする。彼は力強く頷いた。

「富や名声、権力を手に入れた者が次に欲しがるのは、たいてい不老不死です」

「この力は不老不死じゃないけどね」

 苦笑して答えたものの、カインの言うことは一理ある。幾人もの人生を通して見てきた時の権力者は強欲で絶対的な力を欲しがる傾向にあった。

「でも、一歩間違えれば大惨事ね。私欲に駆られる権力者は多い」

 この力を手にしたとき、それが果たして世のためになるのか。下手すれば、反永続的に恐怖政治が行われていく。

「だから見極めるんです」

 神子の心配を断ち切るかのような凛とした声でカインは言い切る。

「あなたの目で、その力を与えるのに相応しい人物かどうかを」

 神子は大きく目を見開いた。決めるのは自分自身だ。

「外に出られるの?」

「出ること自体は簡単です。しかし、一定数あなたが神子ではなくなると不利益を(こうむ)る存在がいる。彼らは反対するでしょう」

 神子の並々ならぬ知識によって村は閉鎖的にも関わらず栄えてきた。彼女から得た知識を他者に売り、利益を受ける者もいる。そういった存在も神子は黙認してきた。

 きっと簡単な道ではない。うまくいかない可能性も高い。でも、繰り返される同じような人生を歩むのはたくさんだ。この力で他者の生き方まで縛るのも。

「やってみせる。どんな結果になっても、行動しないとなにも変わらない」

 強く決意した神子の瞳は揺るぎないものだった。
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