瞳に印を、首筋に口づけを―孤高な国王陛下による断ち難き愛染―
年は十六、七か。ぱっと見ただけでは判別が難しい。露出部分が極端に少なく、髪で左目を隠しているため表情も読みづらい。
翡翠色をした右目がじっとこちらを捉えている。
「どうした?」
声をかけると、少女がゆっくりと領主の元へと歩み寄りながら口を開く。
「あなたはどうして、自身の財を投げ打ってまで隣地から食糧を譲ってもらうの?」
年齢もあきらかに領主より年下で、さらには立場を鑑みても少女の口調と質問は不躾なものだった。しかしなぜか咎める気も嫌な感じもしない。男は素直に答える。
「むしろ領主として自分の領地の民が飢えで苦しんでいるのを指をくわえて見ていろと?」
挑発的な物言いに対して少女は表情ひとつ変えず領主を見つめる。ほのかに銀色がかった緑の瞳は、どこか野性的で冷たく値踏みされている感覚に陥る。
それが逆に彼の興味を引いた。
「他の領地では自分の分は確保しようと民から少ない食糧を巻き上げる領主もいたし、生贄を捧げようと試みる者もいたわ」
「皆、苛立っている。なにかしら原因が欲しいのだろう」
冷静に状況を把握する領主が今度は自分の番だと言わんばかりに少女に尋ねる。
「お前はどこの家の娘だ? 見かけない顔だが……なんだ?」
質問途中で領主は怪訝な顔になった。突然、少女が右腕を前に突き出してきたからだ。手にはなにかを握っている。
翡翠色をした右目がじっとこちらを捉えている。
「どうした?」
声をかけると、少女がゆっくりと領主の元へと歩み寄りながら口を開く。
「あなたはどうして、自身の財を投げ打ってまで隣地から食糧を譲ってもらうの?」
年齢もあきらかに領主より年下で、さらには立場を鑑みても少女の口調と質問は不躾なものだった。しかしなぜか咎める気も嫌な感じもしない。男は素直に答える。
「むしろ領主として自分の領地の民が飢えで苦しんでいるのを指をくわえて見ていろと?」
挑発的な物言いに対して少女は表情ひとつ変えず領主を見つめる。ほのかに銀色がかった緑の瞳は、どこか野性的で冷たく値踏みされている感覚に陥る。
それが逆に彼の興味を引いた。
「他の領地では自分の分は確保しようと民から少ない食糧を巻き上げる領主もいたし、生贄を捧げようと試みる者もいたわ」
「皆、苛立っている。なにかしら原因が欲しいのだろう」
冷静に状況を把握する領主が今度は自分の番だと言わんばかりに少女に尋ねる。
「お前はどこの家の娘だ? 見かけない顔だが……なんだ?」
質問途中で領主は怪訝な顔になった。突然、少女が右腕を前に突き出してきたからだ。手にはなにかを握っている。