ワケあり花屋(店長)とコミュ障女子の恋
「そんなときに、椿。お前と出会った。」
見上げていた空から、椿に視線を移した海は真剣な目でまっすぐに椿を見ている。
「不器用に笑う椿を見て、どんどん椿にひきこまれた。椿って人に、惹きこまれたんだ。こいつの笑顔が見たいって思った。本心が知りたいって思った。考えを聞きたいって思った。もっと椿って人を知りたいと思った。」
初めて会った日を思い出す。面接に来た椿。海は凌駕との約束で、次に来た人を採用するといったものの、本当に大丈夫かと心配したことを思い出し、少し微笑んだ。
「椿が初めて笑ったのを見た時、本当にうれしかったんだ。」
「・・・」
椿も出会ったころのことを思い出し、目を潤ませた。
初めて大切な存在の人ができた。初めて自分の居場所を見つけられた。初めて認めてもらえてうれしかった。いろいろな気持ちを思い出して心がじんわり温かくなる。
「香菜が死んでから、何も感じなかった心が、椿と出会ってから毎日忙しくてさ。椿が笑っただけで、俺までうれしくて、もう一度笑った顔が見たいってマジになって。椿が泣いてるのを見ると抱きしめたくなって、どうにかして励ましたくてさ。」
「・・・」
海の気持ちがうれしくて椿の瞳から涙があふれる。
「俺、気づいたんだ。気づかないふりしてだけで、とっくに気が付いてたんだ。」
海は大きな手で椿の涙を拭う。そしてそのまま、椿の頬に手を触れたまま椿の目をまっすぐに見つめる。
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