愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜





「じゃあ皆さん、今日まで学校お疲れ様でしたー!
明日から冬休みです乾杯!!」

「「「かんぱーい!!!」」」


各々が頼んだジュースが届き、グラスが重なる音が響く。

クリスマスパーティーが始まって数分。
笑顔で乾杯に参加する中、心の中では苛立ちを覚えていた。


その理由はなんといっても───


「はい川上さん、これお皿とお箸」
「あっ、ありがとう〜!」


私の隣に瀬野がいることだ。
もちろんクラスメイトに仕向けられてのことである。

完全に私たちがいい感じだと誤解されてしまったようだ。


再熱した誤解に、もはや諦めを覚え始める。

瀬野自身も誤解を解いたらどうなのだと思うけれど、本人は楽しそうである。


きっと私の反応を楽しんでいるのだ。



唯一の救いは隣に沙彩がいることだろうか。

まあ沙彩自身、私たちを見てニヤニヤしているものだから、あまり救いとまではいかないけれど。


「あーあ、女子のサンタコスとか見たかったなぁ」

コーラを飲みながら、不満を零したのは真田。
サンタコスなんて恥ずかしくて無理だというのに。

女子たちも真田に冷たい視線を向けて『サイテー』などと呟いていた。


「そんなこと言うなよ!
涼介だって見たかったよな!?」

こういう時、人気者はかわいそうだ。
助けを求めるかのように話題を振られるのだから。


「んー、そうだね…少し見たかったかも。
みんなかわいいだろうなぁって。

でも嫌がってるのに強要するのはダメだからね」


なんともうまい返しだ。
まあイケメンだからこそできる、返しかもしれないが。

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