愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
*
「じゃあ皆さん、今日まで学校お疲れ様でしたー!
明日から冬休みです乾杯!!」
「「「かんぱーい!!!」」」
各々が頼んだジュースが届き、グラスが重なる音が響く。
クリスマスパーティーが始まって数分。
笑顔で乾杯に参加する中、心の中では苛立ちを覚えていた。
その理由はなんといっても───
「はい川上さん、これお皿とお箸」
「あっ、ありがとう〜!」
私の隣に瀬野がいることだ。
もちろんクラスメイトに仕向けられてのことである。
完全に私たちがいい感じだと誤解されてしまったようだ。
再熱した誤解に、もはや諦めを覚え始める。
瀬野自身も誤解を解いたらどうなのだと思うけれど、本人は楽しそうである。
きっと私の反応を楽しんでいるのだ。
唯一の救いは隣に沙彩がいることだろうか。
まあ沙彩自身、私たちを見てニヤニヤしているものだから、あまり救いとまではいかないけれど。
「あーあ、女子のサンタコスとか見たかったなぁ」
コーラを飲みながら、不満を零したのは真田。
サンタコスなんて恥ずかしくて無理だというのに。
女子たちも真田に冷たい視線を向けて『サイテー』などと呟いていた。
「そんなこと言うなよ!
涼介だって見たかったよな!?」
こういう時、人気者はかわいそうだ。
助けを求めるかのように話題を振られるのだから。
「んー、そうだね…少し見たかったかも。
みんなかわいいだろうなぁって。
でも嫌がってるのに強要するのはダメだからね」
なんともうまい返しだ。
まあイケメンだからこそできる、返しかもしれないが。