愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「えっ、瀬野くんが言うならやってもいいかも…」
「ね?涼介くんが見たいんだって」
「かわいいとか恥ずかしいね」
真田との差が違いすぎて、少し気の毒に思う。
本人もそれが伝わったようで。
「涼介が見たいのは川上さんのサンタコスだろ!?」
なんて、みんなが静かになるくらいの大きな声を上げてしまう。
最悪だ、ここでそれを言うな。
どうか否定して欲しいと願う中で、あまり期待はできない。
なんせ人の反応を楽しむ瀬野だ、きっと濁すか肯定するかして───
「ううん、そんなこと思ってないよ」
予想外のことが起きた。
瀬野がハッキリと否定したのだ。
もしかして私のために…?
少しばかり瀬野に感謝の気持ちを抱いたのも束の間。
「みんなの前でそんなこと、俺はして欲しくないなぁ」
「……っ!?」
瀬野という人間はどうしてこうも最低なのだろう。
彼の回答は肯定する以上にタチの悪いもので。
「え!今の聞いた…!?」
「聞いた聞いた、瀬野くんも嫉妬するんだ〜」
「ちょ、おい涼介!ふたりってもう付き合ってるのか!?てっきり良い感じなだけかと…!」
ほら、もう最悪。
瞬く間に新たな誤解が広まってしまったではないか。
さすがの私も間に入って否定しようと決めたけれど。
「それは誤解だよ、ただ俺の一方通行なだけだから」
「……え」
驚いたのはきっと私だけではなかったはず。
沈黙が流れ、誰もが瀬野に目を向けていた。