愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



「え、えぇ!?」
「ま、待って瀬野、それはどういうことかな!?」


こればかりは真田だけでなく、私の隣にいた沙彩も身を乗り出して瀬野に質問していた。

待って、いやかなり待って欲しい。
これは嫌な予感しかしない。


「今ここで言うのは恥ずかしいかな…」


なんて、わざと照れたフリをして。
周りがさらに騒がしくなる。

完全に演技だと今この場で言ってやりたいくらいだ。


わざと濁したのだろう、多くの人たちが“瀬野の片想い”だと思ったはずだ。


「あ、愛佳愛佳!ここは瀬野の気持ちを汲み取って、お試しで付き合うのはどうかな!?」

「……え」


隣にいる沙彩が、また何やら良からぬ提案をし始めた。

お試しで付き合うだなんてふざけているのか。


「野々原、それはいい考えだ」
「でしょ!?」


待て、待て。

止める間も無く、周りから期待の眼差しを向けられてしまう。

< 107 / 600 >

この作品をシェア

pagetop