愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「え、えぇ!?」
「ま、待って瀬野、それはどういうことかな!?」
こればかりは真田だけでなく、私の隣にいた沙彩も身を乗り出して瀬野に質問していた。
待って、いやかなり待って欲しい。
これは嫌な予感しかしない。
「今ここで言うのは恥ずかしいかな…」
なんて、わざと照れたフリをして。
周りがさらに騒がしくなる。
完全に演技だと今この場で言ってやりたいくらいだ。
わざと濁したのだろう、多くの人たちが“瀬野の片想い”だと思ったはずだ。
「あ、愛佳愛佳!ここは瀬野の気持ちを汲み取って、お試しで付き合うのはどうかな!?」
「……え」
隣にいる沙彩が、また何やら良からぬ提案をし始めた。
お試しで付き合うだなんてふざけているのか。
「野々原、それはいい考えだ」
「でしょ!?」
待て、待て。
止める間も無く、周りから期待の眼差しを向けられてしまう。