愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜




「じゃあそろそろ解散するか」


時刻は21時を過ぎたところ。
結構な時間騒いでいたようで、さすがの私も疲れた。


外に出ると気温差にやられ、全身の体温が奪われてしまうような感覚に陥る。

あまりの寒さに店内へ戻る人もチラホラ見られた。


「愛佳は瀬野と帰りなよ!」
「……え」


あまりの寒さに震えていると、また沙彩から嫌な提案をされる。

本当に彼女は危険だ。


「いや、私は別に…」

「あ、瀬野いたいた!
もう暗くて危ないし、愛佳を送ってあげてほしいの」


すぐさま行動に移す沙彩が恐ろしい。


「私は大丈夫だから…!」


今日、クリスマスパーティーがあるからといって、電車できてしまった自分にひどく後悔した。

自転車できてしまえば、送ってもらう必要がないというのに。


「ダーメ、愛佳は美少女なんだから良からぬ男に狙われるよ!」

「私が美少女なんてありえないよ…!
それに私は沙彩と一緒に帰りたいな」


じっと沙彩を見つめて頼んでみる。


「待ってダメ、そんなかわいい目で私を見ないで…!」


こんなことで揺れ動く沙彩は本当に単純な人間である。

あと一押しだ。
まずは沙彩の暴走を止めることから優先して───


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