愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「俺が川上さんを送ったらいいの?」
「…っ」
最悪なタイミングで邪魔が入ってしまう。
あと少しだったというのに、この男は。
「そ、そうそう!ナイスタイミングだ瀬野、私はあんたの恋を応援してるからね!」
瀬野が私の隣にやってきて、困ったように笑っているけれど。
それも偽物の笑顔だ。
「じゃ、じゃあね愛佳!
また冬休みに会おう!」
「ま、待って沙彩…」
けれど沙彩は止まることなく、先に帰ってしまった。
「じゃあ俺たちもこれで。
ふたりともお幸せにな!」
「涼介くん、頑張ってね!」
さらに周りも瀬野に肩入れしているようで、邪魔しないようにかそそくさと立ち去ってしまう。
私の味方はいないのか。
もっと私が嫌がれば味方も…いや、それだと好感度が下がるだけだろう。
それほどに瀬野の人気は計り知れない。
「みんな、面白いほど単純だね」
「……っ」
人がいなくなったところでようやく瀬野が裏を見せた。
おかしそうに笑っているのだ。
本当に性格が悪い。