愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜






まだ人が少ない朝の電車に乗り、学校の最寄駅を目指す。

どちらも口を開かない中、車窓から見える景色をじっと眺めていた。


「ねぇ川上さん」
「……なに」

「もしかして怒ってる?」
「別に」


なんて言ったけれど、内心怒っている。
そんなの当たり前だ。

昨日から何度も軽率にキスをされたのだ、許せるはずがない。


「怒るならどうして照れるのかな。
もっと嫌がって、抵抗すればいいのに」

「…っ」

「それに警戒心なんて一ミリもないからね、川上さん。簡単にキスできるんだよなぁ…お願いだから他の男にバレないでよ?」

「うっさい」


本当にムカつく、イライラする。
今すぐその頬を引っ叩いてやりたい。



「かわいい。
外なのに裏が出ちゃってるよ?」

「今はいいの。ちゃんと考えてるから」


この時間帯に、この電車を乗ることはもう二度とないだろうから大丈夫なのだ。

ただ学校に近づくにつれ、気をつけなければならない。

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