お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
「石川常務が言う通り、親父…社長は俺が結婚していないことをずっと前から苦々しく思っていてね。ひっきりなしに見合いの話を持ってくるんだ」

 暖かいお茶を一口飲んで蓮が話し始めた。

「…俺は2年前に副社長になったんだが、忙しくてほとんどプライベートはないような生活をしていたから。…まぁ、親としては心配なのかもしれない。恥ずかしい話だが…」

 蓮の父親はすなわち社長だ。
 真帆は一度だけしか会ったことはないけれどニコニコとして優しそうな印象だった。小夜子も真帆に彼氏がいないことを残念がったりするが、どこも同じなのだと少し微笑ましく思う。
 けれど思わぬ切り口から蓮の話が始まったことに少々面食らっていた。それが自分とどう繋がるのかまったく見当がつかない。
 一方で次々に持ち込まれるという蓮の見合い話にも興味が湧いた。ひっきりなしに持ってくるということは、全てダメになったということだろうか。
 けれど…そんなにたくさん?

「…誤解しないでほしいんだが」

 そんな真帆の内心を読んだかのように蓮は言い訳のようなことを口にする。

「どの相手とも会っていない。…本当にこの2年間は仕事に集中していたからそんな気にはなれなかったんだ」

 そういえば総務課の遠山ゆかりが、蓮が法人営業部の課長から一足飛びに副社長に就任した当初は、それをやっかむ声もあったと言っていた。
 2年間という短期間で誰もが認める副社長になるためには寝食を惜しまずに働くことが必要不可欠だったのだろう。
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