お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
 蓮の瞳の少し薄い茶色が少し濃くなったような気がして、真帆の頬が染まる。
 何も知らないで秘書室にいた自分はさぞかし彼の目に滑稽に映っていただろう。それでもそれを否定しないでくれているような言葉が嬉しかった。
 真帆の頬の柔らかさを楽しむように蓮の親指がそこをふにふにと押した。

「俺の結婚に関してはいつも意見が対立していた親父と俺だが、今回のことだけは…」

 蓮がふっと微笑んだ。

「…じいさんが良い子を探してきたと言った親父の言葉は正しかった」

 お見合いだとは知らずに全く見当違いの方向に突き進んでいたことをただただ恥ずかしく思った真帆だけれど、蓮がそういうならば少し救われるような気がした。
 真帆の頬を楽しむように辿っていた蓮の親指が今度は瞳に添えられる。そして涙に濡れたそこを優しく拭った。
 まるで、もう泣かなくて良いよとでもいうように。

「副社長…?」

「…側にいてくれないか。このまま…俺の側に」

 彼の真っ直ぐな言葉に貫かれるように真帆は息を呑んだ。

 それは秘書として?
 それとも…。

 頭に浮かんだ問いかけはもちろん口にすることはできない。ただ薄茶色の瞳に魅入られたように瞳をそらすことができなかった。

「…真帆?」
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