お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
「べつに手を繋ぐのは初めてじゃないだろう?」

 確かに。
 小夜子が運ばれたあの病院へ行く時も手を引かれた。その温もりに不安で叫び出しそうな心が癒されたことを思い出す。
 真帆は頬を染めてその大きな手を握り返した。
 蓮が"合格"とばかりに微笑んだ。

「オーソドックスと言いながら実は俺が来たかったんだ。この水族館」

 大きな水槽のトンネルを見上げながら、蓮が言う。真帆は綺麗な青に染まる蓮の横顔を見つめた。

「魚が好きなんですか?」

 新しい展示方法をふんだんに取り入れた、見どころ満載のこの水族館は、デートスポットには最適かもしれないけれど、大人の男性が来たいというのはなんだか珍しいような気がした。
 首を傾げた真帆を振り返り、蓮が微笑む。

「釣りとダイビングが好きなんだ」

 その手放しの笑顔に真帆の胸がどきんと大きな音を立てる。とても大企業を動かす男とは思えないほど無邪気な笑顔だった。

「いや、海が好き…かな。学生時代は南の島によく潜りに行ったけど、もうなかなか行けないからね」
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