【完】ボクと風俗嬢と琴の音
現在暮らしているアパートは1K。
一人暮らしするには十分な広さだし、新築希望だった俺にとって築3年で会社からも電車1本で行けるこの場所は理想的だった。
家賃も安くはなかったけど、払えない金額ではなかった。
それに駅から歩いて10分で帰れるし、近くには激安スーパーもある。立地条件はばっちし。
だったはずなんだけど…………。
鍵を開けてすぐに真っ暗な部屋からチリンチリンと鈴の音が響いてくる。
すぐに電気をつけたら、目の前にはふわふわのぬいぐるみのような生き物。
茶トラの鮮やかな模様。
口周りと、手足だけ真っ白で、まるで靴下を履いているみたい。
体中を覆う綿あめみたいな毛、長い尻尾は花が開いたようにふわふわしている。
ピンと伸びた尻尾を揺らしながら、俺の足首に顔を何度も擦り付ける。
そして首元についている鈴と同じくらい高い声で鳴くのだ。
「にゃーん!」