【完】ボクと風俗嬢と琴の音

愛しい命。
けれど、3か月前からの悩みの種。


琴音との出会いはちょうど3か月前、春の事だった。
趣味のひとつであるウォーキング(健康維持の為)をしている時
まだまだ子猫だった琴音が河川敷の段ボールの中に捨てられていた。


まだ小さかったけれど、長毛種の子猫だとすぐに分かった。


捨てられたばかりだったのか、琴音は当時からすごく元気で弱った様子はなかったけど
実家でも猫を飼っている俺は、琴音を見つけて数分そこで遊んでしまった。


遊んでしまったが最後。
明らかに捨て猫と分かる段ボールの中で
小さな琴音は必死になってニャーニャーと鳴き続けた。
このまま鳴き続けたら、声が出なくなってしまうんじゃないかと思うくらい。


さよならの選択肢はなくなっていた。


けれど最初は保護をして、里親を探そうと家へ連れてきた。
うちでは飼えない…。
うちのアパートはペット禁止だから。だからこそ里親を探そうと思って一時的に保護をした…つもりだった。


琴音を連れて帰ってきて、動物病院へ連れて行って、特にこれといって健康面での心配はないと分かった。
もうドライフードも食べれるくらい成長していたし、逆にここまで育てて捨てた人間は許せなかったけど。



里親は探そうと思ってはいた。



けれど琴音が家に来て1週間。


その気持ちは徐々に薄れて行った。


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