【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「山岡ちゃーん!!今日も可愛いね!」
「佐伯さん!お疲れさまです!相変わらず口がうまいですねぇ~!」
「もぉ~同い年なんだから敬語使わないでって言ってるじゃん~!!」
ふふっと花のように笑う山岡さんは我が社でも1、2を争う人気女子社員。
大きな目をくりくりとさせて、いつも笑顔で人当りが良くて癒し系。
人気があるのも分かる気はする。
目が合うと、山岡さんは俺へと微笑んで頭を下げた。
「井上さんも、お疲れさまです」
天使~~~~!!
心の中でそうは思っても、絶対に顔には出さない。
無表情のまま「お疲れさまです」とだけ答える俺は、なんて不愛想でコミュ力のない男なんだ!
ちょっとかっこつけてポーカーフェイスを気取って見ても、彼女の中で俺なんてモブ的な存在に過ぎないんだろうけど。
RPGゲームでいえば村人Aみたいなもんか。
「井上さん、これ」
そんな彼女が、俺に向かって何かを差し出してきた。
てのひらには、絆創膏。
頭の中は?マークでいっぱいだ。
「さっき、井上さん外出する時入り口のドアに頭ぶつけてましたよね…」
そうだ 思い出した。
あれは取引先へ向かう途中だ。
考え事をしながら会社を出ようとした俺は、ぼんやりとしていて歩きながら自動ドアから少しずつずれていって、結果壁に頭が激突した。
そんな姿を、こんな天使に見られていたなんて!!