【完】ボクと風俗嬢と琴の音
スーツのポケットにしまわれていた優弥の指が、俺をさして
呆れたようにため息を漏らす。
「やっぱり晴人は自分を分かってねぇ!
大体お前は俺よりも10センチは背が高いし
そのくせ自信なさげにちょっと猫背だし
顔も人より小さくて、よくよく見ると俳優系だし!
それだけの容姿を持っていながら、自分に自信がないところが謙虚に見えて
…これだから何もしなくてもモテる奴は」
「だからそんなんじゃないって!!
モテた覚えなんて生まれてこの方一度だってないし!
彼女だって高校時代に1回出来たっきりだし、告白だってされないし!」
大慌てで否定したけれど、優弥はその後も独り言のように俺の話を無視して続けた。
「性格は少し抜けてて
でも誰にでも優しそうで
俺だってお前がいい奴ってのは知ってるけど
神様ってやっぱり不公平だよー!!」
駅前の人混みの中で優弥の悲痛の叫びが響いたけど
それもすぐに人々の喧騒にかき消された。
不公平だよー!と叫びながらも、前向きな所が優弥の1番良いところで
嫌味のひとつもないあっけらかんとした明るい性格は、社内の空気も明るくしてくれるし、コミュ力が高い彼は、同期の中でもすこぶる要領が良くて仕事が出来る。
「何はともあれ、今度の合コン楽しみだなっ!
お前も彼女のひとりやふたりくらい作れって!」