桃色のアリス


リズと踊った後はジャックさんや、街にでて仲の良かった子供達と踊ったりしてダンスタイムを楽しんだ。

「ふぅ、一休みしようかな」

どこで休憩しようかな。少し考えて、ベランダなら火照った体を冷やせるし丁度いいな、と判断しベランダにでる。ベランダに出ると、案の定外の空気がひんやりしていて気持ちいい。


空気も美味しいし、ここに来て正解だったな。


それに。白い手すりに手を置き、見慣れた薔薇園に視線を移す。


庭には沢山の薔薇。夜の庭はライトアップがされていて、とても綺麗。 薔薇の花びらに出来る影が深みを出して芸術的な絵を見てるみたい。


ベランダの手すりに体重を預け、目を閉じる。夜風が薔薇の甘い香りを運んでくる。夜風は少し冷たくて、火照った体が少しずつ冷めていく。


薔薇の香りが、肌を触る空気が、今までのこの城で過ごした日々の記憶を引きずり出す。この香りも風も建物の形も、今私に触れるもの全部私の思い出。私の大切なもの。


そしてここにいる私を育ててくれた女王様もそれは同じ。何回も怒られて、いっぱい泣かされたけど、大切なのは変わらない。


『アリス! あんた、また私の部屋に入ったわね!』
『なんで知ってるの!?』


『私のコレクションの位置がずれてるのよ!あ、こら、待ちなさい!アリス!』

年齢不詳で口煩くてとっても我が儘。女王様はお母さんみたいでお姉さんみたいな存在。




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