桃色のアリス
リズとも、このお城で何度も遊んだ。
『リズ! 今日はあっち探検しようよ!!』
『また迷子になるわよ。アリス。もう、懲りないんだから』
リズには何度も迷惑かけたなぁ……それでもリズはいつだって嫌な顔一つせずに遊んでくれた。心優しくて面倒見のいい大事な親友――
ジャックさんとも何度もトランプをして遊んだ。
『アリス殿!! もう一回勝負ですぞ!』
『えージャックさんこれで三回目だよ?』
ジャックさんはトランプ勝負に負けると必ず勝つまでやる負けず嫌い。子供相手に真剣にトランプをしている姿は面白かった。
住み慣れた城。この城は私の唯一居場所。ウサギの時計を止めれば、またここに帰ってくることが出来る。世界の崩壊を防ぐためにも、絶対にウサギの時計を止めなくちゃ……!
また、ここに帰ってくるために。私の大好きな人達を死なせないために。
絶対、ウサギの時計を止めてみせる!!
「よし!」
「アリス?」
「わぁっ!?」
急に後ろから声をかけられて、身体が跳び跳ねる。……び、びっくりした!!
後ろを振り向くとチェシャ猫が立っていた。相変わらずフードは被ったままだ。
「チェシャ猫は着替えなかったの?」
「うん」
パーティーだから着替えれば良かったのに……
「目立ちたくないんだよ。アリス」
チェシャ猫はそう言うけど、むしろその格好の方が目立ってると思うんだけどな。
「なんで黒フードコートなの? そっちの方が目立つよ?」