転生したら、モブでした(涙)~死亡フラグを回避するため、薬師になります~
◇◇◇

事件から一ヶ月経った。ローデンヴァルト先生は起き上がれるようになったということで、お見舞いに出かけた。

通された部屋で、ローデンヴァルト先生は本を読んでいた。顔色はよく、健康そうに見える。

「ローデンヴァルト先生、久しぶり」

「グレーテか」

なんの本を読んでいるのかと覗き込んだら、貴族のしきたりについてまとめたものである。

「ローデンヴァルト先生、爵位でももらうの?」

「まあな。今回の事件を解決した褒美に、くれるらしい」

「そうなんだ」

なんだか、そういう褒美を受け取らないような人だと思っていた。そんな率直な感想を伝えると、以前まではそうだったと答える。

「殺人犯の刑が執行されて死んだと聞いた時、一度心が空っぽになった話を、覚えているだろうか?」

ローデンヴァルト先生の問いかけに、コクリと頷く。

復讐だけを胸に、生きていたらしい。犯人が死んだら、喜びに満ちあふれると思っていたようだ。けれど、現実は違った。

「復讐をして、得られるものはない。だから今回、あいつも殺さなかった」

ローデンヴァルト先生は学園長に、生きて苦しめと言っていた。そのとおりなのかもしれない。生きるというのは、時に死ぬよりも辛いことだから。
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