【電子書籍化&コミカライズ】悪役令嬢はラスボスの密偵として学食で働くことになりました
 改めて褒められると恥ずかしいもので、カルミアは早々と調理モードへ切り替える。
 カルミアもリシャールを手伝って皮をむき、野菜を刻んでいく。
 リシャールにはカルミアほどの速度はないが、正確な動きで作業を進めていた。

「玉ねぎはまず半分に切ってから、くし切りにしましょう。じゃがいもも半分に切って、食べやすい大きさに切ります。じゃがいもは変色しやすいので、水につけておきますね。にんじんも食べやすい大きさに切りましょう」

「随分と手際がいいですね。誰かに習ったのですか?」

「そうですか? 独学なのであまり誇れるものではありませんが、そう言ってもらえると嬉しいです」

「昔から料理を?」

「子どものころからですね。昔はよく、危ないから調理場には立つなと怒られていました」

「カルミアさんが?」

「これでも一応ラクレットの娘なので。普通は料理なんてしませんよね。それなのに私、料理がしたいと言って周りを困らせてばかりいたんです。大人たちの目を盗んでは調理場に忍び込んでいた気がします」

「随分とお転婆な幼少期ですね」

「あはは……」

 誤魔化すためにもカルミアは次の作業へと移った。
 鍋に油を入れ、切った材料を炒めていく。

「肉に焼き色がついて、玉ねぎがしんなりするくらいまで炒めます。ここに水を加えて煮込むんですよ」

 リシャールは時には頷きながら熱心にカルミアの話を聞いていた。

「ここで秘密兵器の登場です!」

 そう言ってカルミアが自慢気に取り出したのは茶色い塊だ。

「それは……?」

 クッキーほどの大きさに砕かれた塊は色合いからチョコレートのようにも見える。しかし質感は粉のようでもあり、リシャールは怪訝そうに見つめていた。初めて目にするのなら当然の反応だろう。

「これは、入れるとたちまちカレーが完成する魔法のもとなんです!」

「それは素晴らしい!」

 パチパチと拍手を贈り、自分のテンションに付き合ってくれたリシャールには感謝したい。

「鍋に入れてとかせば手軽にカレーが作れるんです」

 リシャールが興味深そうに鍋を覗きこむ。

「先ほどまで透明だった水が茶色く! それにこれは、香辛料の香りでしょうか?」

「はい。詳しくは企業秘密ですが、私が調合したスパイスが入っています」

「企業秘密ということは、売り出す予定があるのですか?」
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