16歳、きみと一生に一度の恋をする。
「俺と同い年の子がいることぐらい、母さんも知ってたんじゃないの?」
この五年間、ずっと避け続けてきた話だ。母さんは冷蔵庫をゆっくりと閉めた。
話をすり替えられたら怒ろうと思っていたけれど、母さんは誤魔化さなかった。
「……汐里ちゃん。そう、あの子がそうだったのね」
名前までは知らなくても、やっぱり俺と同じ年齢の娘がいることは認識していたようだった。
「母さんも薄々勘づいてただろうけど、俺ぜんぶ知ってるよ。一彦さんと母さんが不倫関係だったことも」
「…………」
「そのせいで汐里の家族は壊れた。あいつの母親や汐里がどれだけ肩身の狭い思いをしてきたか、想像しなくてもわかるだろ?」
母さんを責めたくはない。でも汐里の痛みを伝えなければ、俺は自分の家族を壊したくなる。
「……母さんは最初からあの人に家族がいることを知ってて受け入れてたの?」
すると、母さんは静かに首を横に振った。
「一彦さんは指輪もしていなかったから私も最初は知らなかったのよ。でもふたりで食事をして話していくうちに奥さんや子供がいるけど、あまり上手くいってないことを話してくれたの」
「母さんと出逢って一緒になりたいからそう言ってたんじゃなくて?」
「……そう、かもしれないわ」
母さんの視線が床へと落ちる。