16歳、きみと一生に一度の恋をする。
放課後。俺は悶々とした気持ちを消すかのように、久しぶりに仲間たちと遊んでいた。
「晃はボーリングやんねーの?」
「見てるだけでいいわ」
「ふーん、そっか」
レーンをふたつ使ってみんなは順番にボールを投げている。俺はその様子を椅子に座って傍観していた。
……足の力が抜けたのは、あの一瞬だけだった。
汐里に気づかれないでよかったけど、あんなことが頻繁に起こればバレるのは時間の問題になってくると思う。
「ねえ、晃。最近付き合い悪くなったって評判だったんだよー? 喧嘩して警察に捕まったんじゃないかって噂されてたぐらいだし」
自分の番が終わった女が、俺の隣に寄ってきた。酔いそうなほどのきつい香水が鼻の奥を刺激している。
「今日うちに泊まりこない? 前みたいに晃と仲良くしたいな」
前なんてあったっけ、と記憶を辿ることもせずに、俺は別のこと考えていた。
こうして、なんとも思っていない女なら簡単に近い距離になれるのに、汐里には無闇に触ることもできないし、触っていい理由もない。
――『やっぱり私と晃は、親しくしないほうがいいと思う』
彼女から言われた言葉が、ひどく頭の中でこだましている。
やっぱり俺たちは、磁石のように重なってはいけない関係なのかもしれない。