16歳、きみと一生に一度の恋をする。
外灯もなく、あるのは空に浮かんでいる三日月だけ。
「……なんで来るの」
汐里がぼそりと呟いた。
「お前こそ、なんでいるんだよ」
「……べつにただ星を見てただけ」
「じゃあ、俺もそういうことにしといて」
そう言って、俺は隣に座った。
微かな音でさえも響くほど静かな空間では、自分の鼓動がより速く聞こえてくる。
キラリとなにかが光ったかと思えば、彼女の服のポケットからおそろいで買ったストラップが見えていた。
「外さないでいてくれてるんだ」
なんとなく、付けづらいものになってしまっただろうなと思っていた。
「だって、せっかく晃に買ってもらったものだから……」
「そう思ってくれただけで十分だよ」
汐里がこの河川敷に来るのは、迷いがある時だということは知っている。
「なあ、汐里。俺たちが親しくしないほうがいいってことも、こうして肩を並べて座ることさえダメだってことはわかってる。わかってるけど……俺、どこにいても汐里に会いたくなる」
その気持ちを抑えようとすればするほど、想いはあふれるばかりだ。
「……なに、言ってんの」
汐里の声が震えていた。彼女はその顔を見せないようにそっぽを向いている。