16歳、きみと一生に一度の恋をする。
「お前がこの河川敷に来るのって、この川の向こうに俺の家があるからだろ?」
汐里はいつも暗闇で光っている遠くの街並みをじっと見ていた。
その瞳は少し切なく、もどかしそうにしながら、同じ方角に視線を向けていることには、最初から気づいていた。
「……うん。そうだよ。でも不幸になれって、念じてたわけじゃない。ただそれによって生活が変わってしまった私たちがいるってことを忘れてほしくなかった」
「わかってるよ。だって本当に俺たちのことをめちゃくちゃにしたいなら、〝裏切り者〟って大きくハガキに書いたらいいことなのに、お前は差出人も受取人の名前すら書かずに封を開けなければ見えない手紙にしてた」
「………」
「壊したいわけじゃない。手紙を送ってきてたのは……気づいてほしかったからだよな?」
今もなお、その痛みや苦しみを抱えている自分たちがいるということを、汐里は必死で訴えていただけだ。