16歳、きみと一生に一度の恋をする。
始業式を終えて、校舎を出ると、初々しい一年生たちがたくさん下校していた。
私はどんな顔をして初日を終わらせたっけ。
きっと誰とも言葉を交わさずにひとりで帰っていた気がする。
「あれ、ここなにもなくなってる!」
「ああ、春休み中に取り壊したらしいよ」
そんな話し声が聞こえているほうに顔を向ける。
物置小屋としてしか使われていなかった二階建ての部室棟は、もうない。
あの唯一、土埃がついていなかった陸上部のドアノブも、何回も一緒にお昼を食べたテーブルも、きみが寝ていた赤いソファも。
――『なあ、手貸して』
右手を預けて何度も私の爪にニコニコマークを描いてくれたあの油性マジックでさえ、どこにもない。
ふたりで過ごした場所は移り変わっていく季節の中で、どんどん変わっていく。
彼との思い出が詰まった河川敷も、この春からかさ上げ工事が予定されているそうだ。
残るものより失うことが多い世の中で。
変わらないものより、変わっていくもののほうが多い世の中で。
もしも、色褪せないものがあるとしたら、それは間違いなく晃と過ごしたかけがえのない日々だ。
それだけは絶対に忘れることはできない。
たとえ、一緒にいた場所がなくなってしまったとしても。