16歳、きみと一生に一度の恋をする。
「最近よく晃と話をするようになったよ。前はもっと攻撃的で接するのも大変な時期があったけど、今の晃はとても柔らかい表情をすることが多くなった。……汐里のおかげなのかな」
「ううん、私はなにもしてないよ」
彼にたくさんのことをしてもらったのに、私はなにひとつ返せていない。
「晃から汐里のことは聞いている」
「……私のことをなんて言ってた?」
「すごくいい子だって。だけど少し我慢しすぎてるところもあるって言ってたよ」
……それは、晃も同じじゃない。
唇を噛みながらも、お父さんに私のことを話してくれたことに涙が出そうになる。
「俺と晃にはずっと距離があって、話しかけても視線すら合わなかった。でも汐里のことを話してくれた時、晃は初めて俺の目をまっすぐに見てくれたんだ。きっとそれだけ真剣で、汐里のことだけは誤魔化したくなかったんだろうな」
その言葉に、じわりじわりと視界がぼやけていく。
「俺は汐里の父親であり、晃の父親だ。それによってふたりのことを深く苦しめてしまっている」
もしかしたら、その壁が崩れることはないかもしれない。
でもそれがなかったら、私は晃に出逢えなかった。
出逢ってはいけなかったという考えを繰り返しても、たどり着くのはいつだって、きみと出逢えてよかったという気持ちだけ。
私はきっと、同じ苦しみを抱えるとわかっていても、また彼へと続いている道を選ぶと思う。
「私、お父さんのこと許せないって何度も思ったけど、恨んだことはないよ」
「……汐里」
「お父さんに守りたい家族があるように、私もお母さんのことを守っていく。でももしなにかあった時には連絡してもいいかな」
言った瞬間に、アイスティーの氷がカランと傾く。同時に、心のしこりも溶けていった気がした。
「ああ、もちろん」
お父さんが涙ぐんでいた。
もう遠回しな手紙なんて送らなくていい。
ちゃんと自分の言葉で言いたいことを伝えていく。
それをしてもいいとわかるまで、ずいぶんと時間がかかってしまった。