16歳、きみと一生に一度の恋をする。
そして私たちは喫茶店を出た。どうやらお父さんはなか抜けをしてきたようで、これからまた仕事に戻るそうだ。
「ありがとう。時間を作ってくれて」
都合は合わせるつもりだったけれど、また臆病な自分が出てくる前にしっかりと話せてよかった。
「汐里。これ」
お父さんはスーツの内ポケットから小さく折り畳まれた紙を取り出した。
「開くか開かないかは自分で決めるといい」
「なに?」
「晃がいる場所だ」
言われた瞬間に、ドキッと胸が跳ねた。
「会ってもいいの?」とか、「向こうは会いたがってる?」とか、色んな質問が浮かんだけれど、お父さんが多く語らずにこれを渡してきた理由ならわかっている。
会うのか、会わないのか、それは自分で決めること。
離れていった彼を追いかけて行くことが、どういうことなのか。
そこにどこまでも覚悟をもてるのか。
私がずっと考えていた答えでもある。
受け取った紙はポケットに閉まった。中途半端な気持ちでは、開けられない。