16歳、きみと一生に一度の恋をする。
今日はバイトがないので、晩ごはんの準備をしているとお母さんがパートから帰ってきた。
「お母さん、お帰りなさい」
「ただいま。今日カレー?」
「そうだよ。今煮込んでるからもう少ししたら食べよう」
「うん。ありがとうね」
お母さんと私は旅行以来、今まで以上に会話が増えた。
睡眠薬に頼ったり、泣いたりすることがなくなったおかげか、毎日お母さんの笑顔を見ることができている。
そのあと晩ごはんを食べ終わり、後片付けが一段落すると、お母さんに手招きされた。
「汐里。ちょっとおいで」
「ん?」
言われるがまま、リビングのテーブルの前に座る。かしこまったように正座しているお母さんが見せてきたのは、なぜか通帳だった。
「あのね、汐里。今まで話したことはなかったけど、お父さんからの養育費がここに手付かずのまま入ってるの」
「……え?」
確認するように通帳を開くと、それは想像よりもはるか上をいく金額だった。
「生活費も含まれているから月に十二万円ほどがずっと振り込まれていた。どうせ最初だけだろうと思っていたけど、あの人はこの六年間忘れずに毎月入れてくれてたわ」
「……そうなの? 全然知らなかった」
両親がどんな話し合いをして別れたのかも教えてもらっていなかったし、お父さんにも新しい家族がいるから私たちへの金銭的な援助なんてされていないと思い込んでた。
「これに手を付けなかったのは私のプライドよ。金銭的なことでも汐里にたくさん迷惑をかけたし、甘えっぱなしだったけど、汐里のことだけは私の力だけで育てていきたいって気持ちがあったの」
……お母さんがそんな風に思っていたなんて、初めて知った。