16歳、きみと一生に一度の恋をする。
「……あの子、すごく治療やリハビリを頑張っているの。口には出さないけど、きっとあなたのためね」
「………」
「大人である私たちがあなたたちのことを身勝手に振り回してしまった。それでも晃に会いにきてくれてありがとう。そして本当にごめんなさい」
この人がお父さんの前に現れなければ、平穏な生活のままでいられた。
誰が悪くて、どうすればよかったかなんてことは、もう考え飽きてしまった。だから……。
「過ぎた過去のことはいいんです。きっと母も同じことを言うと思います」
彼のお母さんは口元に手を当てて肩を震わせていた。小さく会釈を返したあと、私は教えてもらった中庭に向かった。
視界に見えてきた緑豊かな中庭では、色とりどりの花が咲いていた。
どこからか飛んできた蝶々が気持ちよさそうに花の周りに集まっている。
春風に乗って、桜の花びらが運ばれてきた。私はそれを手のひらに乗せる。