My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
「……ちっ」
少しの間逡巡した後に舌打ちひとつしてラグはブゥに視線を向けた。
「頼んだぞ、ブゥ」
「ぶぅっ」
そしてその視線がこちらに下りてくる。
「俺が出たらすぐに鍵を閉めろ」
「うん!」
私が大きく頷くと、ラグは再び鍵を開けた。そして。
「絶対にここから出るんじゃねぇぞ」
「わかってる。気を付けて」
ラグは短くあぁと返事をすると扉を開け駆けていった。
すぐに扉を閉めしっかりと鍵を掛ける。
そして窓の方を振り返り、どくどくと低い鼓動の鳴り止まない胸を押さえながらそちらに近づいた。海賊船の姿はやはり見えない。
――どうか、ふたりが無事戻ってきますように。
「ぶぅ」
そのときブゥが私の肩に留まり顔を覗き込んで来た。心配ないよと励ましてくれているようで、私はその頭を指で優しく撫でた。