My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
するとラグがその人に訊ねた。
「あの旗に見覚えは?」
――旗?
「見覚えも何も、ありゃブルーの海賊旗だ」
「ブルー?」
「この辺りの海じゃ知らねぇもんはいねぇ。今一番厄介な海賊団の名さ」
他の人達も皆しきりに頷いている。小さく舌打ちをしたラグに私は訊く。
「セリーン、無事なんだよね?」
「あぁ、そう見えたが」
「ギグとなんか話してる様子だったな」
乗組員のひとりがそう声を上げた。
「ギグって」
「その新人の名だ。まあ偽名だろうがな」
おじさんはそう吐き捨てるように答えた後で私たちに言った。
「もしあの姉ちゃん追いかけるんなら、非常用のボートを貸すが」
「いや、必要ない」
ラグはおじさんの言葉を遮り船縁に向かって歩きはじめた。私は慌てて後を追う。