俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~
すると困り顔の男性店主が、陳列棚の商品にハタキをかけながら言う。

「そんな決まりはないが、時期が悪い。バルムンド帝国との関係悪化を知らないのかい?」

この国、コルドニア王国は、大河を挟んでふたつの国と国境を接しており、バルムンド帝国とは、そのうちのひとつだ。

三か月ほど前にバルムンドの皇帝が急死し、弟が帝位に就いたのだが、新皇帝は野心家で好戦的。

コルドニア王国には、貿易における不平等条約を締結させようと圧力をかけてきて、その要求は跳ねのけたものの、現在も緊張関係にあるそうだ。

これまで友好国として交易が盛んであったというのに、それができなくなり、我が国全体の景気が冷え込んでいるという。

ほぼ自給自足の農村で生まれ育ち、国際情勢の話など耳にしたこともなかったアリスには、驚きの話である。

「そういうわけだよ、お嬢ちゃん」と店主がハタキを肩に担いで淡白に言った。

「今はどの店も人手を増やす余裕がないだろうし、雇われ人は新たな職を見つけられないとわかっているから辞める者はいない。つまり、お嬢ちゃんを雇ってくれる店はないってことだ」

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