俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~
「振り切れないだろ。所詮、お前はこの程度なんだ。見習いごときが褒められて、調子に乗ってんじゃねぇ。音を上げてさっさとやめちまえ」

「やめません。僕の生きる場所はここにしかないんです」

アリスはキッと前方を睨み、石壁に向けて馬を全速力で走らせた。

「バカめ、自滅する気か?」

グレンはアリスを追わず、馬の速度を落とす。

壁までの百メートルほどの距離など、馬の足では三、四秒だ。

「アリュース、よせ!」

観戦中の騎士たちから静止を求める大声がかけられたが、アリスはそのまま馬をまっすぐに走らせる。

(大丈夫。私なら、絶対にできる……)

石壁に激突する寸前で、強く手綱を引き、馬の鼻先を右に向けた。

馬はいななきながら、九十度以上に進路を変える。

急な方向転換の衝撃は、もろに乗り手に伝わる。

馬上から振り落とされそうになったアリスだが、手綱を手首に巻きつけていたことでなんとか堪えることができた。

体勢を立て直して、心の中で馬に謝罪する。

(びっくりさせて、ごめんね。でも、おかげで距離を離せた。チャンスはきっとこれきり。一気に行くよ)

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