俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~
(焦ってしまったけど、よく考えたらできそう。問題は剣舞よね。どう踊っていいのかわからない。訓練で習った剣術の型を、それっぽく組み合わせれば、なんとかなるかな……)

決意を固めたアリスは、王太子のテーブルから四メートルほど離れたレンガの地面に置かれたワイン樽に歩み寄る。

王太子がこれから余興を始めることを招待客に伝えると、若い貴族たちの視線がアリスに集中し、拍手が沸いた。

バイオリンを持ち、燕尾服の上着だけを羽織った宮廷楽士が、息を切らせて駆けつけた。

演奏つきとは、多少下手でも舞踊のように見えそうでありがたい。

きっとグレンは、アリスが困る事態に陥り、王太子から厳しく叱責されることを企んでいたのだろう。

今、どのような表情でいるのかを確かめる余裕はなく、アリスは観客たちに一礼すると、集中して樽に乗った。

ワイン樽は胴の中央が太いので、グラグラと左右に揺れる。

少しの体重移動で前後に転がり、初心者は上に立つこともできないだろう。

アリスは子供の頃の感覚をすぐに取り戻して上手にバランスを取り、剣を抜いた。

腰に挿していたのは真剣だ。

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